世界で出会った〝日本食〟「プラハの寿司は青かった」  

 政府が日本文化を世界に広める「クールジャパン」戦略の一環に、日本食の発信イベントを含むという。まことに、けっこうな話だ。最近は海外の日本食に、だんだんまともなものが増えているようだが、かつては奇妙奇天烈、不思議な〝日本食〟が多かった。本物の日本食を普及させ、ミシュランの向こうを張って、「星幾つ!!」とレストラン毎に等級をつけてもいい。
 今回は趣向を変えて、これまで筆者が海外で出会った、不思議な〝日本食〟の思い出を紹介したい。
 もともと、欧州での日本への関心は、インテリの間で、禅などの精神的なものから始まった。スイス・ジュネーブの「日本食レストラン」で、哲学青年っぽい男が「焼き魚定食」らしき物を食う場面には驚いた。しばし瞑想してから合掌し、おもむろに箸をとり、修行のような表情で魚を齧りだしたのだ。30年近く前のことだから、今では〝宗教行事〟ではなく普通の食事に進化していることを望むが如何?
 寿司ブームだそうだが、美味いか不味いか、店によって歴然としている。西洋人から見たら日本人と見分けがつかない中国人や韓国人が寿司ブームに便乗して、寿司職人として握る店も多く、やはり、味はしっくり来ない。
 ものすごかったのが、プラハの寿司屋だ。店内の照明が青く、ケースに入った寿司にブルーライトが当たっている。恐ろしくなって早々に退散した。寿司という食べ物に対する頭の中での位置づけが根本的に違っているのだろう。まさかお菓子の一種ではあるまいが・・・。あの店の照明は今、何色だろうか?
 地中海のクルージングで乗った船には、漢字名のついた日本食レストランがあった。入ってみると、職員の法被姿といい、メニューといい、一応は日本風だ。しかし、実は職員全員がインドネシア人。この船では、船乗りは船長以下、イタリア人が中心だが、マッサージから清掃係まで、サービス業務に大量のインドネシア人が従事していた。ひとつの地方から、ごっそり募集に応じて乗り組んでいるのだそうだ。
 焼き鳥を注文した。こちらが日本人と知って、板前が席までやってきて、おずおずと味の感想を聞いた。「タレが少し甘すぎる」と偉そうに答えてしまった。
 日本で修業したことを看板にして、海外諸国の一流日本食レストランに職を得る者がいる。そして、悲喜劇が起きる。これは、ハンガリーでの体験。
 衆議院議員時代、石破茂氏と、自由化後にワルシャワ条約機構からNATOに鞍替えし、新たな枠組みのなかで訓練中のハンガリー軍を視察に行った。地方に展開する野戦部隊を視察してブダペストに帰り、明日は早朝、他の国へ向かうから、朝食をどうするかということになり、現地の日本大使館員に相談すると、「○○ホテル(一流)の調理人のなかに、日本の○○(超一流料亭)で修業し、最近入った者がいる。御握りを頼んで、空港で食べましょう」との提案。
 翌朝、空港の待合室、私と石破氏は、○○仕込みの御握りに期待で胸膨らませて、弁当箱を開いた。すると、(御握りというよりも)でっかい真ん丸い飯の玉に、生臭いスモークサーモンを巻いたシロモノが目に飛び込んだ。ついでにポテトチップと漬物らしき物とバナナがごっそり付け合わせになっている。真相はこうだったようだ。大使館員がホテルに英語で鮭の御握りを注文した。「ライスボール、アンド、サーモン」。日本帰りの板前に伝われば判るはず。しかし、彼はその言葉のとおり作ったのだ。
 尚、恐縮した大使館員が調べてくれたところ、その調理人の日本での修業とは、○○で3カ月の皿洗いのアルバイトだった。