ベトナム国内の日本式医療の状況と
介護人材確保における戦略的ODA

一般社団法人 日本アセアン研究開発機構 代表理事 元衆議院議員 歯学博士 水野 智彦

 安倍政権が発足し早3年が経つ。「アベノミクス」が発表され「三本の矢」の一つ、成長戦略における「海外への医療輸出」はその後どうなったのか。また、2025年には厚労省統計によると約40万人の介護人材不足が報告される中、政府は海外からの研修生等による介護人材不足を担うために現在法案整備に入り、通常国会での法案通過を目指し協議に入っていると聞いている(平成27年12月21日現在)。
 私は5年前の議員時代に「日越友好議員団」として初めて訪越した。当時訪越した議員団で私だけが医療系議員であったため、ベトナム政府高官サイドから、また在越日本人から安心安全な「メード・イン・ジャパン」の日本式医療のベトナムへの導入を強く要望された。当時ハノイには日本人医師が2、3名程しかおらず、全くの日本式医療真空地帯であった。それから5年私自身も何回も訪越し、日本の医療関連機関進出に関する事業に個人的に努力してきたつもりではある。
 現在、ホーチミンでもハノイでも幾つかの日本式医療機関も多少ではあるが進出し、日本語での医療も可能になりつつある。また幾つかの官民の病院計画もあると聞く。しかし、日本国以外の民間同士の合弁医療機関(特にシンガポール)の進出に比べてみればそのスピード感は遠く及ばない、医療の海外進出に対する国と医療関係機関の進行・決定に対する鈍重さを解消しなければ日本式医療はその進出の機会を失うであろう
 今回、3年がかりで藤田保健衛生大学(以下FHU)・Hanoi医科大学(以下HMU)・アセアン短期大学(以下AC)の三校間でMOU(了解覚書)を、国際経済交流協会会長米田建三先生のお力も借りて締結することができた。今後FHUにはHMUやACから年間10名の看護学校生徒の留学を生活費も含めて支援し日本式の看護教育を受けさせ両国医療の礎にしたいと考えていると聞く。FHUから両校にカリキュラムや技術指導も可能となる。成長戦略の一つ「海外への医療輸出」の医療教育の部分が民間の力で進められようとしている。
 私の知る限り日本のベトナムに対するODAは戦略的発想ではなく現行通りの救済的発想でしか進められていないように思える。初期開発途上国ならいざ知らず、ある程度進化し始めた開発途上国においてはそのODAが日本国のためになる支援であっても良いのではと思うのは私だけであろうか?
 先ほどのFHUのMOUの件に関してもいつまでも私学のFHUの好意に甘えていて良いのだろうか、事業を長期に進めて行くには積極的に国が支援していくべきであると考える。

 さて、介護人材についても国は規制ばかりでなく積極的にODA等を使って支援していくべきであり官民一体になって優良な介護人材の確保に努力するべきである。
 ドイツでは、ベトナム国に対しODAの資金により複数の医療関連大学の器材の充実や施設の修繕改築を行う一方で、援助と引き換えに優秀な生徒にドイツへの優先的な人材派遣を学校側に求めてきている。ODAを受けた大学側は優秀な生徒上位100〜200名に対しドイツ語を必須科目とし研修させ卒業時に語学試験を行い、合格者には5年間のドイツへの派遣を確約させており、すでに実施され優秀な医療人材がドイツに流れている。また聞くところでは、このODAはその後ドイツ民間企業に引き継がれると言われており、長期的に官民一体になったベトナム人優良医療人材確保を進めていくという。
 これに対して、日本国は規制の厳しさばかりで人材確保については民間任せであり、このままでは優秀な介護人材の確保は非常に困難になると考える。
 ベトナムだけでなく40万人必要という介護人材不足を前に今後人材パートナーとなるアセアン諸国に対して私たちは少しでも優秀な人材を確保せねばならず、そのためにはドイツのような戦略的なODAを使いながら日本国や国民に対し利益実利が還元されるような支援を官民一体となって行うことを検討すべきであると考える。