『日本人の素質の高さを生かせば経済も政治も必ず甦る』

藤木企業株式会社 代表取締役会長 横浜FM放送株式会社 
代表取締役社長 藤木幸夫
聞き手/公益社団法人 国際経済交流協会 代表理事 米田建三             
(2013年4月発行World Navi)

米田 会長は昔から政界のいろんな方々を指導されてきたことをよく存じ上げております。私自身も横浜市議会議員だった30代からご縁を頂いてきました。今日は日本の港湾政策から政治の事まで、幅広く会長のお考えを伺いたいと思います。
 まず港湾政策から伺います。われわれには世界の港湾ランキングで横浜、神戸の地位が下がったという思いが強烈にあるのですが、実際はどうなんですか?藤木会長
藤木 例えば横浜がかつて5番だったのが今30番だからランクが下がったと言います。でもこれは港を知らない人の話です。ランクって何のランクでしょう? ただコンテナの扱い数量だけです。コンテナの扱いが多いといい港なのでしょうか。
 シンガポールは常にトップです。しかしあそこはデパートの配送所みたいなところ。毎日毎日、向こうの船からこっちの船に積み替えていくだけです。自分の国民の生活に役立つ物なんかありません。しかし日本に入ってくる船は日本の国民生活に直結している。だからコンテナの扱い量だけで港の良し悪しをランク付けするのはおかしいのです。
 ワンポイントサービスも、私は反対です。シンガポールはボタン一つ押すと各省庁に全部情報が行き即日通関できるのに横浜は2日かかるっていいますが、しかしそんなに急いで取りに来る荷主はいません。急いで取りに来るのは密輸屋っていうものなんです。
米田 日本の港湾の質的、総合的な力はすごいという論文を読んだことがあります。外国港の荷扱高が多いといって、あたふたする必要はないのですね。
【横浜の生産性と信頼性は世界一。それを支えるのは日本社会の平等性と先祖から受け継がれてきた日本人の素質の高さ】
藤木 港を見るにはポイントがあります。まず注目してほしいのが能率(生産性)、それから港湾労働者の生活水準、そして信用度。
 荷主、メーカー、船会社、商社など港の使い手にとって例えば横浜港は安心なんです。外国の港だとロンドンへ行く貨物がニューヨークに着いたりという間違いが沢山ありますが日本の港には全くありません。
 すごいという釜山やシンガポールの港湾労働者の生活を見てください。泣きの涙で働いている人がいっぱい居る。パキスタンやバングラデッシュの人たちです。しかし横浜の港には金持ちも居ないし貧乏人も居ません。だから横浜の港湾で働いてる人は、「港で働いてるの、それは良かったね」っていう感じが横浜市民の中では浸透してます。
 こうしたことが能率にも反映するんです。コンテナは正直ですよ。1時間に何本扱えるかはっきり結果がでます。釜山は1時間に30本いかないでしょう。35本ったら大騒ぎになる。香港でも30本。日本はどこも40本から50本の間、しかも安全にです。デンマークのマークスラインという、世界に300近いターミナルを持っている世界1の船会社が「日本にかなうところはない」と言っています。
米田 経済が伸びた戦後の時代なら、荷扱高も横浜や神戸が多かったのは当然で、今度はアジアが勃興してきたから、量はそちらに移ったわけですね。
藤木 そう、コンテナと新興国の追い上げです。北米航路もラストポートが横浜から今は上海、釜山になりました。
米田 日本の港湾の将来は明るいのでしょうか。
藤木 簡単に明るいとは言えません。しかし荷物は増えているし船会社も逃げません。信頼性と能率(生産性)の二つはけっして負けません。私は大連の名誉市民になって大連港湾局の顧問もやっているので、彼らが聞きに来るんです。釜山や上海もね。「1時間に50本も、しかも安全に正確に。いったいどうやるんだ。どういう教え方するんだ」と。港湾学校はあります。でも学校ではそうした技術は教えません。現場で教えて体全体で習得します。変な言い方かもしれませんが、「日本民族が培ってきた優秀性」とでも言うしかないものがそこで発揮されるのです。私たちの体の中にある、縄文、弥生の時代以来、時代時代で日本人の先祖たちが培い受け継いで来た「DNA」のようなものですね。
【自治体の発想と管理では国際競争に勝てない。マッカーサー案こそ理想だった】
米田 今後の港湾政策はどうあるべきでしょうか。
藤木 港湾のあるべき姿については、実はマッカーサーがちゃんとした案をもって来ていたんです。東京湾には六つも港がある。これを東京港湾局で統括して、東京湾を自治体の港の寄せ集めでなく日本国の港にしようという案です。
 つまり国の一元管理の下でそれぞれ特徴を生かして役割分担しようという考えです。横須賀は海軍港、横浜は外国貿易港、川崎は重工業の港、東京は空港、千葉と木更津は国内港という計画でした。これは私が長年言って来た理想の姿です。実現していたらこんな苦労はしていないし釜山なんかに負けていません。
 ところが、昭和25年6月に朝鮮戦争が勃発。取り敢えず地方自治体が港を管理しなさいとなった。これが過ちの元です。なぜなら地方自治体による取り合いが始まったんです。予算、築港、さらに悪いことに荷物の取り合いまで。外国行って「どこそこに入れないでうちの港に入れてくれ」って頼んでは笑われているんですよ。欧米もアジアも同じ国の中で取り合いしてないです。
 いまは港の間での競争ではなく国家間の競争です。例えば上海港は上海人の港ではありません。北京が管理しています。つまり港は自治体から国にもっていかなければ今の厳しい国際競争には勝てないのです。自治体としては自分のところのことを一番に考える。それはいいんです。しかし、そうした地方自治体の感覚では国際競争には勝てません。
米田 マッカーサー案が実現されていれば苦労はなかった、というのは皮肉ですね。
藤木 全くです。ですから私たちは前原(誠司。当時国土交通大臣)さんに、商売人が自分の商売の利害だけで港を考え、海を考えているようでは駄目だ、国家的見地で構想すべきだ、という話をして前原さんも賛同してくれたので、一緒になって港湾法の改正に取り組んだのです。
 スタートは見事でした。制度、法律に手をつけたんですよ。ところが前原さんは1年もしないうちに外務大臣。2代目が馬淵澄夫さん、3代目が大畠章宏さん。このときに原発が爆発して、4代目が前田武志さん、5代目が羽田雄一郎さん。その都度、副大臣も政務官も変わる。しょっちゅう変わってそのたびに「港を勉強します」というのではなかなかね。
【政治家の決断で事態をすすめて、政界再構築を】
米田 長く政界をご覧になってこられた会長は今の政界の状況をどうご覧なりますか。 
藤木 私は(民主党時代の)小沢一郎さんに直接言ったんですよ。政権政党で綱領のないのは、あなたのところとナチスドイツと二つだけだ、と。ところが小沢さんは綱領があるって言う。でもね、ナチスドイツの綱領はヒットラー。民主党の綱領はあなたなんだと。文書じゃなくて、人間なのだと。
 それなのに当の小沢さんが出ないで、鳩山さんだとか管さんだとかを出して、あなたは映画のセットの陰に隠れてしまった。だから駄目に決まってるじゃないですか、と。そしたら黙っていました、下むいて。その後の民主党はご存じの通り。
 みんなの党も分裂気味ですね。渡辺さん、江田さん、浅尾さんの三人は、なかなか合いませんね。
米田 民主党にも結構いいのが居るじゃないですか。彼らが旧来型左翼と縁を切って大合流して「外交・安保は共通で、内政課題で切磋琢磨しあう保守二党」の時代を本格的に作ることを目指す時期ではないでしょうか。
藤木 民主党もみんな相談に来ます。でも結局どっち行くか本人がはっきりしないんです。「やめた!」って決断すればいいんですが。
米田 大阪の橋下市長も、「市長」という国会の外に居る立場のままで、時々、国会議員団に文句をつけるようなことを続けていると第二の小沢一郎さんみたいになってしまわないとも限りませんね。
藤木 そもそも橋下さんは政治家じゃないんです。ポンポン言いますが、政治家じゃないから言えるんです。それがいいところで、勇気がありますね。しかしこのままだと、これから先はどうでしょうか。
米田 日本維新の会については既に国会議員と本部の軋轢がかなり報道されています。国会議員は国政の現場で戦っているから、遠くにいて指示する人より一緒になって指導してくれる人が中心になっていくのは自然な流れです。平沼先生に衆目が集まっているのもそうした事情があるのでしょうか。
【平沼さんの周りをいい人材が囲んでほしい】
藤木 私は平沼さんと一番仲がいいんです。あの品格というか品性というか、政治家の持ってないものをあの方は持っている。だから周りをいい人が取り囲んだら、平沼さんは一番いいですね。
米田 本日は港湾政策から政治の事まで幅広く伺いましたが、どれも日本国をどうするかという観点からのお話でした。これからも大所高所からの御発言を期待致します。有難うございました。