経済再生と財政健全化に向けて
(2013年10月発行World Navi)

 昨年から議論されてきた社会保障と税の一体改革を受け、去る8月21日、医療や介護など社会保障改革の実施時期が明示された社会保障プログラム法案骨子が閣議決定されました。党内では社会保障特命委員会役員会がその方向性付けに大きな役割を果たしましたが、私は同委員会の役員の一人として「活力ある健康長寿社会の実現」を強く訴え続け、「高齢者も若者も健康で、年齢等にかかわりなく、働くことができ、持てる力を最大限に発揮して生きることができる環境の整備に努めるものとする」という一文を入れることに成功しました。今、日本の人口の30%以上が60歳以上です。世界中で60歳以上の人口が30%を超えている国は日本しかありません。健康長寿社会を実現することで、たとえば70歳まで年収300万円位まで確保できるようになれば、今は年金を受け取る立場の人が逆に年金の保険料を払い続ける側の立場になることができます。高齢者が生きがいを見出しつつ、社会の活力の柱となることで、若い世代の負担を軽減できるという考え方を政策に投影させていく必要があるのです。

 ところで、現在の時代状況を理解するには、大ざっぱな歴史的なパースペクティブで状況をとらえておく必要があります。日本の社会保障制度の骨格ができたのが1960年前後。この時の状況を踏まえ、今の時代状況を理解し21世紀の日本にふさわしい国家目標を設定して、それを実現するツールとして社会保障を位置付けるという大きな作業をしなければなりません。
 2005年の世界保健機関(WHO)総会は、国際社会の新たな共通目標としてユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)という皆保険制度と医療の提供体制を一体化させる考え方を採択し、その定義をしました。このUHCとは、「すべての人が、負担可能なコストで、予防を含む適切な医療にアクセスできること」を意味します。日本はそのUHCの実現を1960年代に皆保険制度の実現とともに達成しています。同時に、所得税の累進課税率が75%まで引き上げられたのもこの時期です。加えて、池田内閣は、経済10カ年計画の目標を従来の単なる経済成長から、国民総所得を倍増させるという経済成長の果実を如何に分配するかというところに拡大させ、経済政策として所得倍増計画を打ち出した訳です。

 これらの政策は、「健康で教育レベルの高い中産階級社会を戦後の日本で作る」という大目標を達成する為の政策パッケージの一つでした。この政策パッケージは、高度経済成長期に入る前に組み立てられます。その結果、我が国はこの政策パッケージの所得再分配機能に助けられ、高度経済成長期に国民の所得格差は縮小し中産階級人口が拡大し、社会の安定に大きく寄与しました。自民党の長期政権もこの社会の安定の上において可能となったのです。

 今日、残念ながらこの時期に策定された社会保障制度は急速な高齢化、長期の経済低迷、巨額の財政赤字、雇用関係の変化などにより持続可能性を失いました。我が国は、「経済的・社会的に活力のある健康長寿社会」を21世紀の新しい社会像として新たな政策パッケージを策定する時代状況の下にあります。

 世界がUHCに注目する中、いち早くそれを実現した日本が、世界に先駆けて高齢化社会を迎えようとしています。日本の少子高齢化社会への対応は、シンガポールや韓国、そして一人っ子政策をとる中国を始めとする世界が注目しています。私はいただいた任期の6年間、保健分野で日本を世界の先駆者とし、保健分野を外交戦略として活用することで日本の地位を高め、外交問題への平和的解決の手段としても活用できる基礎を築いていきたいと思います。