国家百年の計として、非製造業の戦略産業群の立ち上げを                          (2014年10月発行World Navi)

2012年2月、野党として民主党政権に経済対策の提言を行った。その素案を作った私の問題意識は、「超円高の是正こそ、最大の成長戦略である」というものだった。時の政権には取り入れられなかったが、政権が交代し、アベノミクスの「三本の矢」によって実行されている。
 一㌦80円を切る超円高は是正され、円安が進行している。だが、景気の先行きには不安が拭えない。輸出よりも輸入が多い現状では、円安は日本経済にマイナスだからである。事実、安倍内閣発足以来の円安による輸出益は5兆円に対して、輸入損は7兆円だ。
 超円高の是正により、輸出関連のものづくり産業は息を吹き返したが、その恩恵は地方や中小企業などには及ばない。識者は、GモードとLモードの違いと説く。すなわち、グローバルに競争する企業群(Gモード)と、ローカル経済圏に生きる企業群(Lモード)の分断であり、その支援の仕方も変えるべきである、との主張だ(冨山和彦著『なぜローカル経済から日本は甦るのか』)。同意だ。
 ローカル経済圏の主体は、GDPや雇用の7割、8割を占める非製造業である。なかでも中小のサービス業が中核となる。
 ちなみに、昨年秋の臨時国会における質問で、私はアベノミクスの地方への波及について、自分なりに警鐘を発したつもりだった。総理への質問では、大都市の百貨店売り上げ増と、地方都市の売り上げ減との格差を強調し、地方版アベノミクスの重要性を訴えた。当時の総理の答弁は、「安倍政権ができる前は、大都市の百貨店すら売り上げが伸びていなかった」というものだった。
 さらに、地方を元気にするためには、予算と法律の上での省庁連携に内実を持たせるべき、と提案。それは、地方創生のための省庁横断的「プラットフォーム」の創設と、各種計画認定のワンストップ化(法律の連携)として、具体化されつつある。
 非製造業が抱える最大の課題は、生産性の低さである。米国と比較すると、一人当たりの付加価値額は金融で9割、専門・技術サービスと建設で8割、流通で6割といわれる。逆に、金融や情報通信、流通にインターネットサービス、宅配、介護、学術・専門・技術サービスの7業種の生産性を米国並みに引き上げると、国内総生産は100兆円増えて、600兆円に達するとの試算もある。
 非製造業の生産性が低い背景には、①零細家業など中小企業の担い手が多い、②低賃金と人材不足、③産業集積とIT活用の遅れ、がある。
 これらの克服のためには、非製造業の高度化を国策として実施する、国家百年の計が必要だ。
 具体的には、人材育成から始めるべきだろう。例えば、全国の大学に地方創生と非製造業に特化した学部を設置して、地方創生の研究開発と非製造業の教育専門家を育成する。と同時に、全国各地にサービス業の人材育成を目的とする専門学校を設置する。
 非製造業を高度化するには、多種多様な市場のニーズを掘り起こさねばならない。それは、官主導ではなく、民間主導、大企業ではなく、中小企業主導によるべきだ。
 民間参入を促すには、地方都市に進出する企業の法人税率(国税)を重点的に引き下げる、外形標準課税の対象外とする、また、労働分配率に配慮した法人税率の導入も検討してよいのではないか。
 企業の地方誘致には、国債の保有率が高い地域金融機関に、地元融資枠を設定して域内投資を促進するのも一案だ。外国人の観光客を増やすために、地方でのカード決済を促進することも重要。すでに構造的な人手不足が始まっている地方において、高齢者や女性の労働参加率を高めるためには、在宅勤務を含めた多様な労働形態と雇用制度の弾力化も課題となる。
 日本経済再生のためには、一時的な対策ではなく、ものづくり優先主義の再考と、非製造業立国を掲げるときではないか。それが地方創生に必ず資する、と確信する。