2020年オリンピック・パラリンピック東京大会までに
受動喫煙防止法制定を                                         (2014年4月発行World Navi)

 2020年オリンピック・パラリンピック東京大会開催が決定した。大会期間中は世界中から、選手・関係者・観戦客が、東京をそして日本全国を訪れることになるだろう。その世界中からのお客様を最大限の「おもてなし」でお迎えすること、そのために国を挙げて準備万端を期すことに異論はあるまい。そして、その「おもてなし」のためには屋内の公共空間(飲食店やホテル・旅館等も含まれる。以下同。)における受動喫煙を防止するための法制度を整備することが必要不可欠なのである。
 タバコを吸わない人が他人のタバコの煙を吸わされることを受動喫煙というが、受動喫煙が健康に害を及ぼすことは科学的に明白に証明されている。そのため、世界保健機関(WHO)が音頭をとって2005年に発効し、現在では我が国も含め177カ国が加盟している「WHOたばこ規制枠組条約」8条2項は「締約国は、屋内の職場、公共の輸送機関、屋内の公共の場所(中略)におけるたばこの煙にさらされることからの保護を定める効果的な立法上、執行上、行政上又は他の措置を(中略)実施し」なければならないと規定しているのだ。我が国を含む条約加盟国が合意のもとに作成した同条約の履行の指針を示すガイドラインでは受動喫煙防止法は罰則付であるべきだとも規定している。この条約とガイドラインを受け、世界中の多くの加盟国が罰則付の受動喫煙防止法を制定済みである。タバコの煙が似合いそうなイギリスのパブですらもはや全面禁煙なのだ。
 また、国際オリンピック委員会(IOC)は1988年以降オリンピックでの禁煙方針を採択し、会場の禁煙化とともにたばこ産業のスポンサーシップを拒否している。そして、2010年7月にはIOCとWHOはタバコのないオリンピックを実現するための「健康的なライススタイルに関する合意文書」にも調印した。このようなIOCの方針を受け、近年のオリンピック開催国そして我が国を除く開催予定国は全て罰則付の受動喫煙防止法を制定しているのである。なかでも象徴的なのは年間国別たばこ消費量の1位2位を占める中国とロシアだ。中国は年間消費量2兆2649億本と2位のロシア3900億本を圧倒的に上回るタバコ大国であるが、北京オリンピック成功のためにWHOのバックアップを受けて、2008年、「北京市喫煙管理条例」を制定した。この法令は北京市内の屋内の公共空間を全面禁煙にするものだが、2011年には中国全土に適用される法律も制定されている。また、ロシアでも、自身がスポーツマンであるプーチン大統領の強いリーダーシップのもと、ソチオリンピック成功のために、2013年、「包括的禁煙法」が制定された。皆様にはぜひソチオリンピックの公式ホームページで〝smoking〟と検索して頂きたい。いかにソチ市が受動喫煙防止に積極的に取り組んでいるかが分かるだろう。
 このように、海外の多くの国、そしてオリンピック開催国では屋内の公共空間は禁煙が常識だ。海外から来るお客様は、世界に冠たる先進国でありオリンピック開催国である日本ももちろん同様だと期待しているであろう。
 ところが我が国では「健康増進法」という法律が強制力のない努力義務を定めるのみなのが実情だ。そのため、神奈川県など独自に条例を制定している自治体を除いては、屋内の公共空間での喫煙も法律上は禁止されていない。このままでは海外のお客様を「おもてなし」するどころか、彼らの健康と気分を害することは必至だ。
 もちろん海外からのお客様だけではない。我が国で暮らす多くの人々が今現在も受動喫煙に苦しんでいる。特に居酒屋などタバコの煙が充満している職場環境で働いている未成年が受動喫煙を強いられている事実は深刻だ。
 いかがであろうか。受動喫煙防止法制定の必要性がご理解頂けたのではないか。皆様のご協力をお願いしたい。