今こそ、再び「坂の上の雲」を目指す時
(2013年7月発行World Navi)

自民党は先の総選挙で政権復帰を果たし、再び国政に重大な責任を担うこととなった。いまさら前政権を批判をしてみても詮無いことだ。
 選挙制度の抜本改革を行って以降、2回の本格的な政権交代が起こったことは日本政治にとって特記すべき大きな変化だ。この間、一部の政党を除き、ほとんどの政党が「政権」を体験し、多くを学んだことは今後に活かされるべき貴重な経験だ。
 自民党にとっても「下野」は再建のために必要な時間だった。3年半の野党経験を通じて理念、政策を見直すことができたからこそ政権復帰が可能となった。再び野党に転じた勢力にとっても同様のことが言えよう。その切磋琢磨を通じてこそ日本の政治は成熟し進化していく。それこそが「政治改革」の目的でもあった。

 言うまでもなく、政権に戻った我々の責任は重たい。過去20年間、経済は停滞を続け、国力は消耗した。加えて、我が国を取り巻く安全保障環境は年を追うごとに悪化の一途を辿ってきた。有効な手立てを講じられなかった責任の大半は我々にある。しかし、だからこその「再登板」である。我々のスローガンに言う「日本を取り戻す」ために、今度こそ答えを出していかなければならない。

 そこで、「三本の矢」を放った。大胆な金融緩和、適切な財政出動、そして、成長戦略の3つを同時進行させることによって、「円高デフレ」を脱却し、日本経済を再び堅調な成長軌道に乗せていく。これまでの政策の反省に立脚した取り組みに国民のマインドも市場も敏感に反応し始めた。
 これからこそが正念場だ。外にあってはグローバル化、内にあっては少子高齢化が加速していく中、経済を再生させていくためには、厳しく困難な改革を着実に進めていかねばならない。
 TPPをはじめとする一連の自由貿易協定に果敢に取り組み、日本経済の地平を広げ、大胆な規制改革によって民間の持てる力を発現させていく。一方で、消費税増税を実現して社会保障基盤を安定させ、財政規律についても明確な方針を内外に示していく。まさしく綱渡りのような政権運営を余儀なくされるが、この綱をしっかりと渡っていかねばならない。

 外交、国防に関しても基本的な戦略の確立と態勢の立て直しが必要だ。これから世界で最も豊かに発展していくアジアを、「力の外交」や「恫喝の外交」がまかりとおるような地域にしてはならない。
 我が国はこの地域の将来を正しく構想し、実現していく責任を有している。それがためには、「パワー」において押し負けることがあってはならず、それ以上に「ヴィジョン」と「指導力」において劣ることがあってはならない。
 「日米同盟」が引き続き我が国外交防衛の基軸であることに変わりはないが、その米国も財政上の事情から軍事リバランスを余儀なくされている。「同盟」を再定義し、応分の役割を担っていく覚悟が必要だ。
 我々は現下の厳しい環境に対応し得る「強靱で機動的な防衛力」を整備していく方向に舵を切った。その上で、地域の懸案をあくまでも国際法と外交慣例に則って平和裏に解決していく。
 地域発展の基盤は「平和」と「安定」であり、その基盤の上に各国の国民力が最大限に発揮される。その共通の理解さえあれば問題の解決は可能だ。「歴史」の問題に拘泥せず、未来を創造していく姿勢が必要だ。平和で豊かな「大アジア」へ向けて、今こそ明確なヴィジョンと戦略を打ち立てていかねばならない。

 冷戦が終結して早や20数年が経過した。世界を規定していた大きな枠組みが変わったのであれば、新しい環境に適応し得る態勢が求められて当然だ。この間、我が国は試行錯誤を繰り返すばかりであったが、いよいよその経験を活かしていく時だ。今こそ再び「坂の上の雲」を目指す時である。