経済再生は教育再生から                                    (2014年4月発行World Navi)

 「現代のベートーベン」ともてはやされた某氏。実は、別人が作曲しており、耳が聞こえない障害者でもなかったことが暴露された。某氏は記者会見で謝罪したが、途中で逆ギレする始末である。
 「ノーベル賞級の発見」「リケジョ(理系女子)の星」ともてはやされたSTAP細胞発見者。しかしながら、論文のコピペ(複写と貼り付け)が指摘され、新発見自体が疑われてしまっている。彼女の「いけないとの認識がなかった」との発言に対して、研究者としての倫理欠如が指弾されている。
 最近話題となった二人は、現代の日本人をある面象徴するような気がして仕方がない。
 天然資源の少ない日本にとって、人材こそが国力の要であり、歴史的に教育に力を入れてきた。しかし近年、日本人の劣化が叫ばれている。学力、体力、規範力が低下してきており、常識や教養、倫理や道徳という言葉は、死語になろうとしている。創造的で個性豊かな人間をつくるという「ゆとり教育」が、無教養でモラル欠如の人間を生み出す「ゆるみ教育」に堕してしまっている。個人主義が利己主義へ、普遍主義が刹那主義となり、自分さえよければいい、今さえよければいいという風潮の蔓延が指摘されている。
 それに対して、安倍総理は、日本を取り戻すために、経済再生と同時に、教育再生を掲げている。経済を担うのは人材であり、人材活性化なくして経済活性化はあり得ないからだ。私は、アベノミクスの四本目の矢は、教育再生であると訴えている。
 実を言うと、教育再生の取り組みは、七年前の第1次安倍内閣から始まっていた。戦後初めて教育基本法を改正し、「公共の精神を尊び、豊かな人間性、創造性を備え」「伝統を継承し」「未来を切り拓く」日本人をつくることが目標とされた。その実現に向けて、親が子の教育の第一義的責任を負うこと。幼児教育の取り組みから始めること。規律と意欲ある学校教育を行うこと。大学とともに職業教育も重視すること。教員は崇高な使命を自覚して研究と修養に励むこと。国民すべてが生涯にわたってあらゆる機会・場所での学習ができること等を目指している。
 その改革の緒についたところで、安倍総理は病気退陣となり、その後自民党は政権から転落してしまった。民主党政権になると、教育再生は事実上停滞してしまった。なぜなら競争を忌避し、悪平等主義の日教組が、民主党の教育政策を牛耳っていたからだ。彼らは、改正教育基本法を敵視し、自民党の始めた教育再生の取り組みに反対し、骨抜きにしようとした。そして、それは結果的に経済の低迷にもつながっていたと思う。
 一昨年に安倍自民党総裁が奇跡的な逆転によって生まれ、総選挙で自民党が政権を奪還した。第2次安倍内閣は、経済再生を最優先に取り組んでいるが、教育再生も重要視している。改正教育基本法の実現を図るべく、教育再生実行会議を組織し、自民党と一体となって必要な施策を展開し始めている。
 自民党が公約に掲げ、文部科学省が実現した施策の一つが、道徳教育の強化である。今回道徳の時間に使用する教材が一新された。「心のノート」改め「私たちの道徳」である。4月からすべての小中学生約一千万人が学び始めている。教材は、学年ごとに4種類あり、古今東西の多くの偉人たちが取り上げられている。
 その一部を紹介すれば、小学校一・二年では二宮金次郎、三・四年ではファッションデザイナー小篠綾子・ソニーの井深大、五・六年では豊田佐吉・三方良しの近江商人・米百俵の小林寅三郎、中学校では上杉鷹山・松下幸之助・本田宗一郎・渋沢栄一等々が採り上げられている。
 また、学制の見直しの議論も始まっている。戦後の六─三─三─四制の普通教育を中心とした単線型からの脱却である。小中一貫の九年制や、高校から高等教育にかけて普通教育と職業教育との複線化等である。
 安倍総理、下村文科大臣の下、私は経済再生と車の両輪である教育再生に引き続き取り組む覚悟である。